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5-9。

  24, 2013 13:43
ペッピーノ?珍しい。一人で来るなんて。
そう思ったけど、すぐにフレイヤも顔を出す。
ああ。まぁ、そうだよな。そんな簡単に一人になれるわけがない。
羨ましい。素直にそう思う。
騎士、だ。護ってくれる。傍にいてくれる。
声を、かけてくれる。……なんて。羨ましい。

私の思考をよそに、フレイヤがおずおずと差し出すそれ。
「線香花火、って、言うんだって。火をつけて、楽しむものだって、聞いて……それで、その。時間があったら、で、良いのだけど…一緒に、やりませんか…?」
線香花火と言うらしいそれを、一緒にやらないかと誘ってくる。
短いつきあいで分かったフレイヤの性格としては珍しい話。
「後の二人は?」
「…声、かけてない、の。あの、ええと……私、シヴさんと…お話、したくて…」
……よっぽどまじめな話らしい。
「わかった。でもあと10分ぐらい待ってくれ。」
手を止めていた下ごしらえを再開。

木べらで炒めながら、考える。
そういえば……これをキレイだとか言ったんだったか。
何も知らなければそうなのかもしれない。
キレイで、便利な力。……見せ物じゃねえぞ。

二人連れだって海へ。
昼間に比べてずっと静か。
虫の声と違って、寄せては返す波の音。
このぐらいの時間が一番良いのかも知れない。
私みたいなものにとっては。
面倒が無くていい。

「あの…お昼、お誘い、断っちゃって……ごめんなさい。楽しそうだなって、思ったんだけど…人がたくさんいる場所、ちょっと、怖くて…」
「あーそれな……。私も失敗だった。ほら、私人に触っちゃいけないからさ。すっごい大変だった。」
一緒に蘇る記憶。
続いて蘇る記憶。
アジェットは慣れた痛みだと言った。
サローメは痛いのが好きだと言った。
フレイヤは……どう感じるのだろう。

線香花火を受け取り、指先の火花で火を付ける。
これが見たかったんだろ?
予想通りに向けられた視線に、笑顔を作ってみせる。
「便利だろ?」
「あっ……ごめんなさい…お料理、してる時も、今も……見つめちゃって。失礼なことだって、分かってるのに。……私も、そう言う部分、あるから…気持ちが良い事じゃないって、分かってるのに。ごめんなさい…」
……謝るのか。見ていたことを。
「……いや、いいんだ、今更しょうがないことだし……。」
そう今更だ。曲がりなりにもしばらく寝食を共にして、それで隠している意味なんて無い。

……そういう部分?
「……前から思ってたけど……もしかして火が苦手なのか?」
私の問いにようようといった感じに答えが返ってくる。
「……小さな火は、大丈夫。お料理の火、は…ちょっと、怖いくらい。大きな火は……。」
ああ、なるほど。そういえばそんな感じだったな。それでか?
そう思ったところでさらに言葉が続く。

「……私も、ね。お父さんに…実験、に、使われたの。」

……それでか。
「……そうか。」と短く答える。声が少し、震えている。
そしてフレイヤの声はもっと震えている。
「少し、身体に、後遺症があるけど…」
黙って説明を聞く。
言葉が見つからない。
なんて声をかければいいんだろう。
私だったら、なんて声をかけて欲しかったんだろう。

考える私に、追い打ちをかけるように。
「あの、ね…? シヴさん、は……お爺さんが、嫌い?」
今度は言葉に詰まった。
言いたいこと。伝えたいこと。叫びたいこと。がありすぎて。

絞りだすように答える。
「……なんで家族なんだろうな。」
ずっと思ってきたこと。口に出せなかったこと。
だけど一度堰を切れば、後はため込んでいた思いが続く。
「これが知らない誰かだったら恨んで終わりだったのに……。」
「わかるんだ。ジジィも後悔してるって事。」
「私が使ってる鍋……見たこと無いだろ?特製なんだ。私のための。」
「私の部屋は、私にしか使えない私のための道具であふれてる……。」
「でも、時々、何でって思う……。」
「死んでたら、その方が良かったのかもって……時々思ってる。」
「だから嫌いだけど、大事。」

なんで。
どうして。
どうしたら。
なんのために。
だれの、ために。
こんな……ことを。

答えが……出ない。

疑問に、フレイヤが答える。
「……愛されて、いると思う。」
「ちょっとだけ、やり方を間違えたんだって。……それで、終わらせる事は、出来ないって…分かってるけど。」
「私も、パパの事、大切よ。いつか、パパが考えてた事、分かるようになるかも、って…思ってる。私と、シヴさんは、違うから…あの、上手く言えないけど……」
フレイヤの手が、火の消えた線香花火を握ったままの私の手を握る。
熱い……手。そう感じた。
「私、大事、って聞いて…嬉しかった、の。嫌ってても、心に置いてて…良かったって。心から、追い出しちゃったら、シヴさんも、居なくなっちゃうから。お爺さんが居て、シヴさんが居て…だから、私が好きな…シヴさんがいるの。だから、良かったぁ……」
私が、好き。それを聞いて胸の奥がきゅうと縮まるのを感じる。
握られた手を入れ替えて握り返す。
正面から見たフレイヤは泣いているように見えた。

「……ありがと。」
今言うことの出来る全部の言葉で、やっとの思いで礼を言う。
「私、シヴさんの事、好きよ。アジェットさんも、サローメさんは…ちょっと、怖いけど、好き。だから、分かっていきたい。知っていきたい。……良い、かな?」
なんだろう。旅に出てから……この人達は一体。
私が触れても怖がらない……私に自分から触れてくるこの人達は。
「うん……私も。フレイヤのこともっと知りたい、と思う。」
こんな私でもいいっていってくれる、人を。


この手を、もう離さないで。
それなら私、何でもするから。
友達のために、何でもするから。

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