スポンサーサイト

  --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

5-7。

  24, 2013 13:42
すっかり陽も落ちて海からの帰り道。
私よりほんの少しだけど、目線の高い横顔を盗み見みる。
いつもと変わらない……けど心持ち楽しそうに見えるのは気のせい?

今日の昼間からの一日を思い返す。
私は一人っ子だけど、もしもお姉ちゃんが居たらこんな感じだっただろうか。
「アジェットは……今まで好きな人とかいた?」
少しドキドキする質問。
「私はずっと各地を旅してたから、特定の人に好意を持つことはなかったなー。精霊達も好きだけど、そういう意味ではないよね?」
残念。もしかしたら甘いお話が聞けるかと思ったのに。

「うん……あのね。」
「子供っぽいって笑われるかも知れないけど……白馬の王子様っているのかなって……。」
「……精霊でも良いって……私みたいなのでも良いって人、居るのかな……。」
だったらいいな、っていうお話。現実じゃあり得ない、夢の世界のお話。
アジェットは「そういう歌ならたくさんあるし、」と前置きをして。
「気にしない人だって、それをひっくるめて愛してくれる人だっていると思うよ。世界は広いんだから。何せ異世界があるぐらいだしねえ。」
……そうか。アジェットは別の世界の人だった。
それなら……もしかしたら、私の思う夢の世界もどこかにあるんだろうか。

「アジェットはそういう世界を……そういう世界が普通だった?」
「私も結構特殊な立場だったからなぁ…でも、違和感は無いよ?」
きっとたくさんの色々な世界を渡り歩いてきたアジェットからすれば、当たり前な話だったのかも知れない。
……当たり前……当たり前か……。
「私は……ジジィはしょうがないって言うし……でもどうしようもないんだ……。」
嫌なことを次々と思い出す。
せっかく沈めた、忘れたい思い出達。
「ごめんな、いっぱい気を遣わせてるよな……?」
「ごめんな、ご飯しか作れないのに、こうやって付き合って貰ったりとか……。」
次々と口を突く謝罪の言葉。だけど。
「寧ろいつも美味しい食事作ってくれてありがとね。それに、こうやって祭りに参加できるのもいい経験だし」
本当、だろうか。
思い出す、どんどん離れていく手。固い表情。次にあったときの目。
「しょうがない……しょうがないんだ……生まれつきが悪かったんだ……。」
つい呟いてしまった言葉は、アジェットの耳にも届いてしまっただろうか。

きゅうと胸の奥が痛む。ああ。もう。いいや。

繋いで、といわんばかりにアジェットの手をつつく。
アジェットは少しだけ首をかしげて手を差し出してくれる。
胸が高鳴るのを感じる。
だったら、壊してしまえ、と。小さくおもいながら。
アジェットの手を握り……抱え込む。
「……嬉しかったり、一緒にいて欲しいなって思ったら……思うほど、みんな……。」
チリチリと小さい音。アジェットの腕に電気が流れている音。
「な?」笑顔で尋ねる。多分今、アジェットの腕はしびれて感覚がないぐらいになってるはず。
嬉しくても悲しくても強まる電気。
触れたいと思っても、触れちゃいけない。
触れて欲しいと思っても、触れられちゃいけない。

だけど。
「な?」と重ねて同意を求める私を。
アジェットは撫でてくる。
「な?って、言われてもねぇ」苦笑い。してる。
「痛くない?」悲鳴を上げても良いほどに。痛い、はずなのに。
その表情は普段と変わりのない、眠たげな。
「痛い、というか、鈍い?かな」
「昼間言ったように、私慣れてるからさー。この世界に来てからは初めてだけれど。」
精霊と、同じ。
大人でも飛び上がって逃げる、そんな痛みが慣れる?
理解できなかった。
サローメといい、異世界の人ってみんなこうなんだろうか。

パシンと音を立てるほどに、私からあふれる電気が減って。
ずっと我慢していたことを口に出す。
「あのな、私、こうやって手繋ぐの、好き。」
「頭撫でられるのも好き。」
誰かとこうやって一緒にいることや、抱きしめられたり、隣りに座って貰えることが、好き。
「アジェットは、そうしても怒らないか?」
「怒らないよ。同じ旅の仲間なんだから」
「シヴさんこそ、子供扱いしないで!って、怒らない?」
「ううん。私、パパもママも小さい頃からいないから……うれしい。」
まだ抱きかかえたままの腕に、頭をすりつける。
好き。好き。嬉しい。
「貰うばっかりでお互い様じゃない気がする。」
私は料理しか作れないのに。歌を聴かせて貰って。近くにいてくれて。
「そう?うーん……じゃあ、泥棒とお姫様の話みたいに、この世界の話が聞きたいな。どう?」
また胸の奥が痛む。……今度は嬉しくて。
「えっとなーじゃあなー。いっつも泣いてるドラゴンのお話。とか。どう?」
「うん、お願い」
「私の住んでた所から南の方にドラゴンが住んでてな?」

他に、喜んで貰える事って、何だろう。
友達のために。そうジジィの声が聞こえた気がした。

[SummerVacation]
PTMのENo.1736 アージェティリア様をお借りしています!

- 0 Comments

Post a comment

What's New

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。