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2-94。

  21, 2011 01:11
目が、覚める。

ノドに違和感。
触れる包帯。
目を動かすと、お母さんが目に入った。
イスからずり落ちそうになっている。

「ぉ……っ」
お母さん、と呼ぼうとして痛みに息が詰まる。
ノドが、痛い。

「ああ、麻子、気がついた……?」
お母さんがのろのろと体を起こす。
疲れ切ってるみたいだった。

それでも力を込めて立ち上がり。
私の頬に触れた。
「大丈夫。これでもう大丈夫よ。」
「もう、心配はいらないわ。」
「少し時間はかかるかもしれないけど……。」
「元通り。何もかも、元通りよ。」

よく、わからないけど……。
お母さんの手が温かくて、ほっとする。

あ、お姉ちゃんは?
お姉ちゃんはどこ?
ねえお母さん。

「麻子……愛してる。」
お母さん?

ゆっくりと。
ゆっくりと、私に覆い被さるようにお母さんが倒れていく。

お母さん。
お母さん?
お母さん?!

ぱちんと、近くで音がした。
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島に来た目的は達成された。
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カップがかちゃりと音を立てる。
その縁をそっと撫でる。
両手で囲う。

私が使う、私のカップ。

胸が締め付けられる。
時が過ぎて、思い出になって。
それでもこのカップに触れるたび、昨日のように思い出す。

暖かかったこと。
愛してるって言われたこと。
初めてのワガママ。
そして笑顔と……泣き顔と。

ずっとずっと……忘れない。
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さらさらと筆を走らせる。
うーん。これで伝わるかな……。

コンコがちゃ。
「ぃぁ。」ノックもそこそこに麻子が「来た」、と呼びに来る。

あれから、2年。
麻子は結果として声を失った。

「わかった、すぐ行く。」書いたばかりの紙を丸める。

あの時に比べて少しだけ大人びた顔。
私を呼ぶ声。
差し出された手。
笑顔。
自然な、笑顔。
握りしめた暖かさ。
涙がこぼれる。

ああ……この子は生きてる。
まだ、生きてる。

それが嬉しくて。
すごく嬉しくて。嬉しくて。嬉しかった。
その暖かさを感じられることが、嬉しかった。
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「う?」
アーシアが私の持ってる紙を指さす。
「ああ、表に貼っておこうと思って。」
拡げてみせる……けど、あまりわかってないっぽい。
まあ読めたらそれで良いんだけど……。

「ほら、麻子。待たせてるんだから早く並びなさい。」
お母さんに怒られる。
「……どの麻子?」すぱん
もってた紙ではたかれた。
「全員よ、全員。」ぱすぱすぱす
連続ではたかれる。

「ほら、早く。」
お母さんが私の手を引く。
お母さんは私を置いていかない。

「じゃあ……全員、愛してくれる?」

お母さんがゆっくりと振り向く。
そっと、それからぎゅっと抱きしめてくれる。

「麻子……ずっとずっと、愛してる。」



私は今、笑っているだろうか。
それとも、泣いているだろうか。

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