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2-93。

  21, 2011 01:09
「使い方は……わかるわね?」
うなずく。
「じゃあ夕方ぐらいには戻るから……それまでには決めておきなさいね。」
……うなずく。
「イイコね、麻子。」
頭を撫でて、キスしてくれる。

お母さんが私の傍にいる。
だから。
離れたくなくて、
離したくなくて。

袖を掴む。
いつか麻子が私にしたみたいに。
だけど声は出せない。
麻子と違って、私はちゃんと声を出せるのに。
でも、今は声を出す気になれない。
置いてかないで、とその一言が言えない。

お母さんは少し困った顔をして、
もう一度優しく抱きしめてくれる。
「麻子……愛してる、本当に。」
優しい言葉。
私に向けられた言葉。
私だけに向けられた言葉。
ずっとずっと聞きたかった言葉。

うなずく。

手を、離す。
お母さんを引き留めないように。
嬉しいを逃がさないように。
暖かさを忘れないように。
幸せを閉じこめるために。

自分を抱きしめる。

この気持ちと、ずっと一緒に。
お母さんが私を愛してくれるなら。
他に、何も。
そう、
他に、何も。
----------------------------------------
綺麗に包帯の巻かれた首。
少しかすれた息。
手を握る。
冷たい……けど、まだ血の通っている手。

私の血がいるんだって。
たくさん。

私のノドがいるんだって。
全部。

私が必要なんだって。
麻子のために。

……息が、苦しい。
----------------------------------------
色んな事があったね。
色んな人と会ったね。
色んな所に行ったね。
一緒に。

覚えてる。

料理食べさせて貰う約束したこと。
私の変な料理を笑いながら受け取ってくれたこと。
また一緒に料理を作る約束。
名前を付けてくれた人。
私のケガを気にしてくれたこと。
私のために泣いてくれた人。

遺跡の中。
海。
ハロウィンもした。

たくさんおしゃべり。

全部……全部、麻子のおかげ。
ありがとう。ありがとう。
ごめんね。ごめんね。

……返すね。
----------------------------------------
後悔。

どうしてこうなってしまったんだろう。
理由はいくつでも挙げられる。
自分の望んだ、選んだ結果なんだから。

だけど、納得できない。
どうして私は。

そのままにしておけばよかった。
壊れるのならそのまま。
今までと同じように。
道具のように。

どうして一緒に暮らし。
同じものを食べ。
湯につかり。
隣で眠り。
そして名前を呼んでしまったんだろう。

魔法と呼ばれるもの。
異世界の技術。
豊富なマナ。
そして……過去を変えられる装置……。
この島に求めて、そして叶わなかった。

後悔。
こんなことなら、離れず一緒にいてあげれば。
こんなことなら、ご飯を一緒に食べなければ。
こんなことなら、名前を付けなければ。

こんなことなら。
こんなことなら。
こんなことなら……。
----------------------------------------
「私。」
「私ね。」
「ずっと、捨てられたと思ってた。」
「私がワルイコで。」
「だから。」

血の、匂い。

「麻子も麻子で。」
「私も麻子で。」
「名前、言っちゃダメで。」
「私はいらなくなったんだって。」

お薬の、匂い。

「でもそうじゃなかった。」
「すごく、嬉しい。」
「嬉しいの。」
「なのに。」

甘い、匂い。

「もっとって……思っちゃうの。」
「ワガママで……ワルイコで……ごめんなさい。」

お母さん。

「でも。」
「でもね。」
「今、麻子を助けてあげたら……イイコだよね?」
「私、イイコになれるよね?」
「そしたら。」
「そしたら、」

私を。
----------------------------------------
「あの……あのね。」
思い詰めたような表情で言う。
「ワガママ……ワガママ言ってもいい?」
私を見ようとしない。
「あのね。」
スカートの裾を握りしめている。
「カバン、カバンの中にね、カップがあるから。」
視線が落ち着かない。
「二つ。麻子のと……私の。」
声が震えている。
「私の……を、お母さん、使って?」
麻子が私にお願いをしている。

麻子が、私に。
私にとって何の得にもならないことを。
お願い……している。
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「それ、から……。」

「……それ……から…………。」

「……っ……。」

「…………。」

「麻子、を……愛して、くれる?」
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「最後……。」
「最後、に、もう一つだけ……いい?」

「あは、こ、こんなに、ワガ、ワガママばっかり言ってたら、また……。」
「また、ワルイコになっちゃうね。」

「あの……あのね。」
「怖い……怖い、から……。」

「寝るまで……抱きしめてて……欲しいの。」
「……ダメ?」
----------------------------------------
不思議。

あんなに震えてたのに。
あんなに怖かったのに。
今は、平気。

血のにおい。
お薬のにおい。
甘いにおい。
お母さんの、匂い。

うれしい。
あったかい。
しあわせ。

えへへ、ごめんね麻子。
今は、私がお母さん独り占め!

自分が笑顔になってるのがわかる。
何も考えないで、ただお母さんと一緒にいる。
なんて幸せな気持ち。
他に何もいらない、幸せな気持ち。

……幸せでいっぱいのまま、注射器を首に当てる。

あれ、変なの。
こんなに今落ち着いた気持ちなのに。
手だけ震えてる。

「麻子。」

お母さんが、私の名前を呼ぶ。
見上げたお母さんは、泣いている。
そして思い出す。

そうだ、あの時。
初めてのあの時。

お母さんは、泣いていたんだった。

大丈夫。
大丈夫だから。
私は平気だから。
泣かないで。

「お母さん……愛してる。」
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プシュ
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 私は、幸せ。 



----------------------------------------
HAPPY END

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